1982年11月5日、ビクター音楽産業(現・JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)からリリースされた森進一の通算56枚目のシングル『冬のリヴィエラ』。発売当時の歌謡界において、この布陣はまさに青天の霹靂でした。前年に歴史的名盤『A LONG VACATION』を記録的ヒットに導き、一躍時代の寵児となっていた大滝詠一と松本隆の黄金コンビが、演歌界の頂点に立つ森進一に楽曲を提供するなど、誰一人として予想していなかったからです。
この異色のコラボレーションが成立した最大の引き金は、サッポロ生ビールのテレビCMソングとしての大型タイアップ企画でした。当時のビール市場は冬場に需要が落ち込む傾向があり、メーカー側は「冬でも美味しく飲める洗練された大人の世界観」を表現できる新曲を強く求めていました。そこで広告代理店とレコード会社が白羽の矢を立てたのが、都会的なポップスで若者を熱狂させていた大滝詠一と、圧倒的な知名度と歌唱力を持つ森進一の融合だったのです。
当時、デビューから15年以上が経過していた森進一自身も、自らの音楽性に強い危機感を抱いていました。『襟裳岬』(1974年、吉田拓郎作曲・岡本おさみ作詞)でフォークソングとの邂逅を果たし日本レコード大賞を受賞した成功体験を持ちながらも、固定化しつつあった「情念の演歌歌手」というパブリックイメージから脱却し、より広い世代に届くポピュラーソングの表現者でありたいという強い渇望を抱いていたのです。制作スタッフの熱意と本人の変革への意志が合致した瞬間でした。