空間を包み込む圧倒的な黄金の輝き。その中心にあるのが、若き日の天才絵師・狩野探幽の手による金碧障壁画の復元画だ。部屋ごとに異なるテーマで描かれた松竹梅や威風堂々たる虎の姿は、訪れる者を平伏させる圧倒的な威圧感と、どこか洗練された美意識を同時に漂わせている。
この極上の美術空間の起点となった人物こそ、徳川幕府の礎を築いた徳川家康にほかならない。家康は九男・義直のためにこの御殿の造営を命じ、尾張徳川家の権威を天下に示すシンボルとし、天下泰平の世における武家の美学を刻み込んだ。壁面に描かれた勇猛な虎や雄大な風景画には、単なる鑑賞用美術を超えた、徳川の天下を強固にするための政治的メッセージが込められているのだ。