「誕生」が紡ぎ出された背景には、映像作品との深い結びつきがありました。本作は東映系で公開された感動巨編映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』の主題歌として依頼を受け、書き下ろされた経緯を持っています。過酷な雪山で命を救う救助犬と人間との絆、大自然の厳しさと生命の尊厳を描いた物語に向き合うなかで、中島みゆきは単なる劇伴の枠を遥かに超えた「いのちの讃歌」を着想しました。
さらに同年10月にリリースされた20作目のオリジナルアルバム『EAST ASIA』において、「誕生」はアルバム全体のフィナーレを飾るラストトラック(9曲目)として配置されます。アジアという広大な大地と人々の営みを歌ったタイトル曲「EAST ASIA」で幕を開け、様々な人生の機微を描いた旅の果てに「誕生」が鳴り響く構成は、アルバム全体の思想的到達点として高い評価を獲得しました。
アレンジャー瀬尾一三の手腕による壮麗なオーケストレーションと、命の重みを真正面から捉えたプロデュースワークが融合し、楽曲は不朽の芸術へと昇華したのです。