本作のグランドフィナーレを飾る最終章(第6章)では、第1章から物語の狂言回しを務めてきた主人公・白井雪(しらい ゆき)の原点と決着が描かれました。
読者の間で長年議論を呼んでいた「雪の顔にある火傷の痕」の過去と理由は、幼少期における実母からの凄惨なネグレクトと虐待によるものでした。母親から熱湯を浴びせられたトラウマと、顔の右半分に残るケロイド状の傷跡を隠すためのコンプレックスが、彼女を「レンタル彼女」という仮面を被る仕事へと駆り立てていた背景が克明に明かされます。
最終章において、雪は過去の清算のため故郷へ戻り、施設に入所していた実母と直接対峙します。ここで本作が秀逸なのは、少年漫画的な「母娘の劇的な和解」という安易なカタルシスを描かなかった点です。雪は母の身勝手な弁明や弱さを目の当たりにし、親を許すのではなく「自分はこの親とは違う人間として、精神的に切り離して生きる」という心理的バウンダリー(境界線)を確立しました。
また、雪に好意を寄せ続けていた好青年・辻壮太(太陽)との関係性にも注目が集まりました。一般的な少女漫画であれば結ばれてハッピーエンドとなる展開ですが、雪は太陽からの告白を受け入れつつも、依存し合う恋人関係ではなく、まずは一人の人間として大学を卒業し、就職して自分の足で生きていく道を選択します。レンタル彼女の仕事を辞め、素顔を隠すファンデーションを落とした雪が、前を向いて歩き出すラストカットは、読者に強い余韻と救いを与えました。