5年に一度実施される公的年金財政検証は、言わば日本の年金制度の定期健康診断だ。最新の検証データを紐解くと、経済成長率や労働参加率のシナリオに応じた将来の所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金受給額の割合)が明示されている。現在の所得代替率は約60%前後を維持しているが、長期的には50%程度まで緩やかに低下していく見通しが示されている。
この給付水準の緩やかな引き下げを担う自動調整メカニズムが、マクロ経済スライドである。現役人口の減少と平均余命の伸びに合わせて、年金額の改定率を物価や賃金の伸びよりも低く抑える仕組みだ。この調整機能によって制度全体の破綻を防ぐ「長寿化への適応」が図られているわけだが、受給者視点で見れば、インフレ下において実質的な購買力が徐々に削られていくことを意味する。