ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の企画段階において、制作陣が最も頭を悩ませたのが「津崎平匡」という難役のキャスティングでした。原作漫画(海野つなみ作)における平匡は、35年間恋愛経験のない「プロの独身」であり、真面目で几帳面、感情を表に出さないシステムエンジニアです。
一歩間違えれば単なる気難しい人物に見えかねないこの役柄に対し、プロデューサーの那須田淳氏や峠田浩氏が白羽の矢を立てたのが星野源さんでした。制作陣が明かしたオファーの決定打は、「受動的な主人公であっても、視聴者が思わず応援したくなる愛嬌とリアリティを同居させられる唯一無二の表現力」にありました。
当時、音楽活動に加え、舞台やドラマ『コウノドリ』、大河ドラマ『真田丸』で着実に評価を高めていた星野源さん。彼が持つ独特の温かみとペーソス(哀愁)は、自尊感情の低さに悩む平匡の内面を可視化するうえで不可欠なピースだったといえます。