1980年代から1990年代にかけ、彼は自身のブランドを手掛け、株式会社FICCEを設立して一躍脚光を浴びた。ビートたけしをはじめとする多くの著名人が彼の独創的なニットを着用し、ブランドは爆発的なブームを巻き起こした。しかし、バブル崩壊とともに事態は一変する。突如として襲いかかったのは、15億円という天文学的な巨額負債だった。
足元から崩れ去る事業、取り立ての電話、日増しに募るプレッシャー。多くの関係者が去っていく中、最後まで彼の傍らを離れなかったのが妻だった。質素な暮らしへの一変を余儀なくされても文句ひとつ言わず、「あなたが作る服が好きだから」と夫を奮い立たせた彼女の覚悟が、失意の底にあったデザイナーを再び立ち上がらせたのである。