土俵上に流れる特有の緊張感を、一瞬で爆発的な歓声へと変える力があった。呼出しに名前を呼ばれ、仕切り線に立つ直前。拳を力強く握り込み、自らの胸や顔を激しく打つ。あの気合注入パフォーマンスは、極度の緊張とプレッシャーに立ち向かうための極限の自己暗示だった。どこかコミカルでありながら、命がけの勝負に挑む哀愁と必死さが同居していたからこそ、人々は彼から目を離せなかったのだ。
その唯一無二のキャラクターは、土俵の外でも大きな旋風を巻き起こした。老舗食品メーカーである永谷園の顔として長年にわたり起用された永谷園テレビCMでは、飾らない素顔とお茶目な人柄がお茶の間に浸透。相撲ファンのみならず、子どもからお年寄りまで幅広い層に親しまれる存在となった。CMで見せたあの親しみやすい笑顔の裏には、常に怪我と闘い、己の弱さを克服しようとする不屈の闘志が隠されていた。