なぜ竹下佳江のトスはブレないのか。なぜ相手ブロックは彼女の手に吸い寄せられるように振られるのか。その秘密は、常軌を逸した体幹の強さと、卓越した空間認識能力にある。
どれほど乱れたレシーブであろうと、一瞬でボールの下に入り込む足さばき。跳躍しながらでも上半身の軸を完璧に保ち、指先の微妙なタッチだけでボールのスピードと回転をコントロールする。スパイカーが最も打ちやすい打点へと「置いておく」ようなトスは、職人技という言葉すら生ぬるいアートの域に達していた。
だが、真に恐ろしいのはそのメンタルだ。ピンチの場面ほど、相手の裏をかく大胆な配球を見せる。安全策に逃げることなく、コート上の12人の中で誰よりも冷静にゲーム全体を鳥瞰(ちょうかん)していた。その鋭い戦術脳こそが、「世界最小最強」の真の正体だったと言える。