テレビカメラが立ち入れないロッカールーム。そこは、勝敗を分ける最後の「言葉」が紡がれる聖域だ。長年の密着取材によって明らかになったのは、勝利を手にする名将たちが実践する徹底した心理管理術である。
阪神タイガースを38年ぶりの日本一へと導いた岡田彰布氏の采配を見ても、その卓越した言葉選びと役割分担の明確化が際立っていた。選手に対して過度なプレッシャーを与えず、各人が自分の仕事に没頭できる環境を作り出すこと。過酷なレギュラーシーズン、そしてSMBC日本シリーズのような一発勝負の短期決戦において、選手の集中力を極限まで高めるのは、ベンチからの明確で迷いのない指示なのだ。
勝率を数パーセント引き上げるために、名将たちはロッカールームで何を語るのか。ある名将は、敗戦後のロッカールームで一切選手を責めず、具体的な翌日の対策だけを提示するという。また別の指揮官は、あえて特定のベテランに厳しい言葉を投げかけることでチーム全体の緊張感を保つ。こうしたロッカールームでの生々しい駆け引きこそが、試合終盤の1点を争う場面で劇的なドラマを生み出す源泉となっている。