同じ日活の同僚であり、生涯のライバルかつ盟友であった石原裕次郎は、小林旭の悩みを誰よりも近くで見守っていた。当時の日活撮影所では、スター同士の結婚がもたらす興行上の影響について真剣な議論が交わされていたという。映画会社の看板を守らなければならない日活株式会社と、音楽界の頂点に君臨する日本コロムビア。二つの組織の意地とビジネスモデルの違いが、二人の新婚生活に影を落とし続けた。
石原裕次郎は周囲の喧騒から友を守ろうと心を砕いていたが、芸能界の巨大な構造的圧力は一若者の手で抑えられるものではなかった。撮影所の控室で見せたまさかの涙や、本音を吐露した夜の記憶。当時の仲間たちの証言は、スターという重圧の陰でひたむきに生きた一人の男と女の素顔を物語っている。