1990年代、将棋界は谷川浩司と羽生善治という二大巨頭による黄金時代を迎えた。世紀のライバル対決は、世間の注目を一身に集めた。NHK杯テレビ将棋トーナメントなどの大舞台をはじめ、タイトル戦での壮絶なぶつかり合いは数知れない。
羽生が前人未到の七冠独占へ挑んだ際、最後の壁として立ちふさがったのが谷川だった。日本中が熱狂に包まれる中、妻は自宅で静かに吉報を待ったという。勝利の歓喜も、敗北の悔しさも、全てを分かち合ってきた。ライバルとの死闘の裏側で、夫の肉体と精神が削られていく様を誰よりも近くで見つめ、支え続けたケアの賜物が、あの歴史的名勝負の数々を支えていたのである。