彼女の凄さを語る上で外せないのが、妥協を一切許さない徹底した役作りの姿勢だ。容姿を綺麗に見せることなど微塵も固執しない。役柄の人生を生き切るためなら、体重の大幅な増減はもちろん、肌の質感や立ち振る舞い、声のトーンに至るまで生活そのものを変貌させていく。
ある映画関係者はこう明かす。「池脇さんは現場に入る数か月前から、その役の人物として日常を過ごしている。撮影初日に現れた時点で『女優・池脇千鶴』の気配は完全に消え去り、そこにいるのは物語の登場人物そのもの」。静けさの中に狂気と愛おしさを同居させる独特の表現力は、数々の映画賞を総なめにしてきた事実が雄弁に物語っている。作品ごとにまったく異なる顔を見せるその怪演の裏には、己の心身を極限まで削り出すストイックな執念が存在する。