母親から受けた虐待の記憶は、時間が解決してくれるほど甘いものではない。遠野なぎこがこれまで明かしてきたエピソードは、あまりにも凄惨だ。言葉の暴力、身体的虐待、そして精神的なコントロール。それらは彼女の幼少期を徹底的に破壊し、大人になってからもなお、彼女の心を縛り続けている。
母がこの世を去った今でも、その呪縛が消え去ることはない。むしろ、対峙する相手を失ったことで、怒りや悲しみの持って行き場を失うという新たな苦しみに直面している。彼女が発する言葉の一つひとつには、血が通っている。だからこそ、私たちの胸を締め付けるのだ。