インテリア誌や量販店の店頭では長年、「奥行40cm=日本の住宅事情に最もマッチするスリム&大容量」というナラティブが喧伝されてきました。しかし、流通市場を調査すると、この「万能説」が売り手側の都合で形成された側面を否定できません。
楽天市場で「奥行40 収納ボックス」を検索すると14,951件、Amazonでは40,000件以上という膨大な商品が流通しています。これほどまでに40cmモデルが乱立する背景には、合板の原板サイズ(サブロク板=910×1820mm)からの歩留まりが良いという製造・流通側のコスト構造が存在します。メーカー側が作りやすく輸送効率が良いサイズが、いつの間にか「消費者にとって最も使い勝手が良いサイズ」としてすり替えられてきた歴史があるのです。
もう一つの落とし穴が「動線幅の誤認」です。日本の標準的な廊下やキッチン通路の幅は芯々で910mm、有効幅では約78〜85cmしかありません。ここに「薄型だから大丈夫」と奥行40cmのラックを置けば、通路の有効幅は一気に40cm前後に半減し、人がすれ違うことすら不可能なボトルネックが発生します。「置けること」と「生活動線として機能すること」の間には、埋めがたい溝が存在することを冷静に見極めなければなりません。