教科書などでは「英語が通じなかったために置き去りにされた」と簡潔に説明されることがありますが、歴史検証の観点からは重大な盲点が存在します。
ノルマントン号に乗船していた日本人の中には、英語を理解できる知識人や、身振り手振りで危険を察知できる大人が多数含まれていました。にもかかわらず、救命胴衣の着用指示やボートデッキへの誘導が行われた形跡は一切ありませんでした。船長らは「日本人が狂乱して船底に逃げた」と主張しましたが、引き揚げられた遺体や遺留品の状況は、閉じ込められたまま水死したことを物語っていました。
つまり、真相は「コミュニケーションの不成立」という偶発的な事故ではなく、「危機的状況下における有色人種乗客の切り捨て」という構造的差別意識と職務放棄に他ならなかったのです。