航空ビジネスの根幹を揺るがすのが、機体重量とコストの冷徹な計算です。機体のカラーリングは、単に塗料を買って塗るという単純な作業では済みません。
機体に塗布される塗料の量は、大型旅客機(ボーイング777クラス)でドラム缶数本分、乾燥後の重量にして約250kg〜300kg、下地材や保護クリアコートを含めると最大で500kg近くに達します。機体重量が1kg増えるだけで、年間数百万円規模の追加燃料費が発生する民間航空の世界において、塗装重量の増加はそのまま運航利益を圧迫します。濃い色を均一に発色させるためには塗料の重ね塗りが必要となり、白単色で仕上げるよりも確実に機体が重くなります。まさに飛行機塗装重量と燃費は表裏一体の関係にあるのです。
さらに見逃せないのが飛行機機体塗装コストです。大型旅客機1機の全塗装には、塗料代・作業人件費・専用ハンガー(格納庫)の使用料を含めて1回あたり1,500万〜3,000万円以上の莫大な費用がかかります。さらに塗装作業中は機体を1週間から10日ほど運航から離脱させなければならず、その間に発生する機会損失は数千万円規模に跳ね上がります。
また、航空会社機体カラー真相の鍵を握るのが「航空機リース市場」の構造です。現在、世界で飛んでいる旅客機の5割以上が航空機リース会社からのレンタル機材です。白い機体であれば、リース期間満了後に別のエアラインへ転貸する際、尾翼のロゴと最小限のデカールを貼り替えるだけで再配備できます。胴体全面が個性的なカラーに染まっている機体は、元に戻すための再塗装費用が莫大になるため、リース会社から敬遠され資産価値(リセールバリュー)が落ちるというビジネス上の裏事情も存在します。