連覇の歴史が途切れる瞬間には、決まって強烈なドラマが凝縮されている。1990年代初頭のプロ野球界において黄金期を築いた西武ライオンズは、1990年から1992年にかけて日本シリーズを3連覇し、1993年に前人未到の4連覇を目指していた。しかし、その野望を打ち砕いたのが野村克也監督率いるヤクルトスワローズだった。
当時の報道記録や選手たちの証言を検証すると、勝敗を分けたのは「情報の解像度」と「勝利への執着の質」だったことがわかる。前年の日本シリーズで西武に惜敗していたヤクルトは、丸1年をかけて西武打線の細かな配球の癖や走塁の傾向を「ID野球」によって徹底解剖していた。対する西武ベンチには、長年の常勝がもたらした「最後には地力で勝てる」という無意識の慢心が漂っていた。第7戦までもつれ込んだ激闘の末、ヤクルトが歓喜の胴上げを果たした瞬間、グラウンドに立ち尽くす西武ナインの姿は、常勝軍団の終焉を象徴していた。
また、2019年の箱根駅伝において、青山学院大学の5連覇(4連覇後の更新)を阻止した東海大学の戦術も見逃せない。東海大学の両角速監督は、青学の絶対的な武器であった「山登り・下りの特殊区間」ではなく、フラットなスピード区間に主力を集中配置し、往路でプレッシャーを与え続ける作戦に出た。青学のエース区間にアクシデントが発生した際、東海大学は一切の動揺を見せず、計算されたラップタイムを刻み続けて悲願の初総合優勝を飾った。王者を倒す瞬間とは、相手の土俵で戦うのではなく、相手が嫌がる独自のゲームメイクを貫いた側に訪れるのだ。