『レ・ミゼラブル』の物語構造において、エポニーヌとコゼットは鮮烈な「光と影」の対比として描かれています。実は幼少期、この力関係は完全に逆転していました。
強欲なテナルディエ夫妻の愛娘として甘やかされ、綺麗なドレスを着てコゼットをいじめていた幼少期のエポニーヌ。対してコゼットは、召使いのように扱われる薄幸の少女でした。しかしジャン・バルジャンによってコゼットが救い出され、教養ある令嬢として育ったのに対し、テナルディエ一家は破産してパリの暗黒街へと転落します。成長したエポニーヌは、父の犯罪の手伝いをさせられる路上生活者へと身を落としていました。
青年貴族マリウスの前に現れたとき、コゼットは「純白のドレスを纏った手の届かない天使」であり、エポニーヌは「泥にまみれた頼れる仲間」に過ぎませんでした。マリウスがエポニーヌに向ける感情は、どこまでも友情や哀れみであり、異性としてのときめきではありませんでした。生まれ持った出自や環境の残酷な逆転劇が、エポニーヌの悲劇性をより際立たせています。