小栗旬のキャリアを振り返る上で欠かせないのが、視聴者や批評家を唸らせてきた演技力と存在感の進化です。10代の頃に出演した『GTO』(1998年)のいじめられっ子・吉川のぼる役や、『ごくせん』(2002年)の内山春彦役など、初期は等身大の若者像で注目を集めました。
しかし、舞台演出家・故蜷川幸雄氏の厳しい指導のもとで徹底的に身体表現と発声を叩き込まれたことが、彼の俳優人生における大きな分水嶺となりました。当時のインタビューや手記において小栗旬本人は、「蜷川さんの現場で自分の無力さを痛感し、毎日のように悔し涙を流したことが役者としての根幹を作った」と回顧しています。
その成果が結実したのが『花より男子』の花沢類でした。原作ファンから「実写化不可能」と言われていたミステリアスな美男子役に対し、小栗旬は立ち居振る舞いやポケットに手を入れる角度、視線の落とし方に至るまで綿密なアプローチを展開。単なるイケメン枠にとどまらない陰影をキャラクターに宿らせ、視聴者を熱狂させました。
そして30代後半から40代へと差し掛かり、その演技力は『鎌倉殿の13人』で円熟の極みに達します。脚本の三谷幸喜氏は公式の対談で「小栗旬という俳優の持つ体幹の強さと、どんな無理難題の感情の変遷にもリアリティを持たせられる受容力の高さに救われた」と絶賛。SNS上でも「回を追うごとに目の光が消えていく演技が凄まじい」「善人が権力によって怪物化していく過程が生々しすぎる」といった声が相次ぎ、名実ともに日本を代表する実力派トップ俳優としての地位を不動のものにしました。