金峯山寺は、単なる一寺院の枠にとどまらず、奈良県吉野山から和歌山県熊野へと続く大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)の起点であり、修験道(山岳信仰に仏教・神道・道教が融合した日本独自の宗教)の総本山です。
2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の中核資産としてユネスコ世界文化遺産に登録された背景には、自然そのものを神仏の宿る御神体として崇敬し、厳しい山林修行を通じて精神を研ぎ澄ます独自の文化景観が高く評価された点にあります。
現在の蔵王堂(本堂)は、幾度の焼失を経て天正20年(1592年)に再建されたもので、東大寺大仏殿に次ぐ木造古建築の巨頭として国宝に指定されています。堂内に入って驚かされるのは、立ち並ぶ68本の大柱です。これらは製材された均一な柱ではなく、スギ、ヒノキ、クスノキのほか、自然の曲がりをそのまま活かしたツツジの原木などが使われており、山岳の荒々しい生命力を堂内に直接持ち込んだかのような迫力を醸し出しています。