タレの仕上がりを左右する最大の要素は、主原料である醸造酢のクオリティと特性にある。一般的に普及している穀物酢はすっきりとした鋭い酸味が特徴であり、油分の多い魚の脂を洗練された後味に変える効果が高い。一方で、米酢を使えば米由来のコクとまろやかな甘みが加わり、料亭のような上品な余韻を作り出すことができる。
化学的な視点からも、酢に含まれる酢酸には肉や魚のタンパク質を極限まで柔らかくする作用がある。加熱処理したタレに揚げたての食材を浸すことで、急速な温度低下に伴い細胞膜へ浸透圧が働き、タレの旨味が食材の奥深くへと一気に染み込んでいく。使用するお酢の種類にこだわることこそ、家庭の味覚をレストランレベルへと引き上げる最短の近道なのだ。