当時の開発現場で一体何が起きていたのか。世界的なデザイナーである深澤直人と開発陣が挑んだのは、携帯電話という概念そのものの再定義だった。「チョコレートバーのような板に格子状のキーを敷き詰める」という意匠の構想は一見シンプルだが、量産化への道のりは壁の連続だった。
基板の極薄化、キータッチの感触、そして何より鮮烈な色彩の再現性。工場の職人たちとミリ単位の妥協なき調整を重ね、単なる工業製品を超えた生命感を吹き込んでいった。極限まで削ぎ落とされたラインとタイルのような配置が生み出す手触りは、開発チームの偏執的とも言える情熱が生み出した奇跡だった。