「弱者には虫唾が走る」——冷酷無比な言葉を言い放ちながら、その声の奥底にはどこか痛切な虚無感が漂う。無限列車編での鮮烈な登場から年月が経った今もなお、猗窩座の第一声が観客に与えた衝撃は色あせていない。強さのみを至上命題とする鬼の威厳と、崩れ落ちそうなほどの孤独。この相反する要素を同一の台詞に同居させる芸芸たる技こそ、石田彰という役者の真骨頂だ。
ただ声を張り上げるのではない。喉の奥をわずかに鳴らすような息遣い、音の語尾を僅かに切り落とす独特の間尺。言葉の端々に滲み出るのは、強さを求めざるを得なかった男の悲しい執着だ。彼が放つ言葉は、聞く者の耳を突くだけでなく、胸の深いところへ重く沈み込んでいく。