文治高座の真骨頂は、本編に入る前の「マクラ(枕)」にある。時事ネタから楽屋の裏話、果ては身内の暴露話まで、容赦のない毒舌が次々と繰り出される。その切れ味は鋭く、時に客席から悲鳴と爆笑が混ざり合った歓声が上がるほどだ。時事問題を斬る際も、上から目線の評論ではなく、一人の市井の人間としての喜怒哀楽を全力で叩きつける。
しかし、ただの暴言で終わらないのが名人の凄みだ。激しいマクラで客席のテンションを極限まで引き上げた後、すっと古典落語の世界へと引きずり込む。そのギャップに観客は痺れる。滑稽噺はもちろんのこと、人間の業や愚かさを温かく描く噺への接続は見事というほかない。過激な毒の裏には、人間という生き物に対する底知れぬ愛着と落語という芸への狂気的な情熱が隠されている。