300年以上続いた名門ロマノフ朝が崩壊へと突き進んだ真実の背景には、政治的失策だけでなく、最高権力者ゆえの深い孤立感と痛切な家族愛が存在していた。国を背負う重圧に押しつぶされそうになりながら、皇帝ニコライ2世とその皇后アレクサンドラは、互いへの盲目的な愛と家族を守る強い想いにすがった。
しかし、その閉ざされた愛憎劇と閉鎖的な宮廷生活は、民衆や側近たちとの間に決定的な断絶を生んだ。孤立を深める最高権力者が下す決断は、ことごとく国家を危険な賭けへと追いやることになる。権力の頂点に立ちながら誰をも信用できなくなった皇帝の孤独と、家庭の幸福を優先するあまり大局を見失った宮廷の悲劇。最新研究は、国家の崩壊が政治の失敗であると同時に、個人の心理的限界が招いた愛憎のドラマであったことを克明に浮き彫りにしている。