原作者である吾峠呼世晴が描く『鬼滅の刃』の本質は、単純な力による勝利ではなく「想いの継承」にある。珠世というキャラクターはその象徴だ。鬼に変貌させられながらも、自らの意志で人間としての倫理と知性を保ち続けた彼女の生き様は、無惨の誇示する冷酷な生命力とは真っ向から対立する。
作品全体を貫く重厚なダークファンタジーの色彩の中で、珠世の手がけた薬学の研究は炭治郎や禰豆子、そして鬼殺隊の隊士たちへと託されていく。自身は救われずとも、次の世代に希望を繋ぐ。その自己犠牲の精神こそが、少年漫画の枠組みを超えて大人の鑑賞者の心をも強く揺さぶる理由だろう。