彼女の代表作の中でも、特に読者の記憶に深く刻まれているのが重厚な大河ロマン『砂の城』だ。過酷な運命に翻弄される主人公たちの愛憎劇、そしてドロドロとした人間の業や愛執を真っ正面から描いた本作は、連載当時大きなセンセーションを巻き起こした。
単なる悲恋ものにとどまらず、嫉妬や孤独といった負の感情のグラデーションをドラマチックに美学化してみせた。読者は息をのむようなサスペンス展開に引き込まれ、ページをめくる手を止められなかった。人間心理の深淵を抉り出すその手腕は、後年のドラマや心理サスペンス作品の礎となった。