「他社発行のクレジットカードを登録した決済が使えなくなる」という方針が初めて公表された際、決済業界のみならず一般消費者の間にも激震が走りました。当初のアナウンスでは2026年8月に新規登録を終了し、2026年1月には完全に利用停止とされる予定でした。しかし、結論から言えば、2026年現在も他社クレジットカードによるコード決済は依然として利用可能な状態が続いています。
決済業界関係者の証言や公正取引委員会の動向を総合すると、この方針転換の背景には単なるユーザーサポートへの配慮を超えた、独占禁止法上の極めてデリケートな力学が存在していました。当時、登録ユーザー数が6,000万人を突破し、コード決済市場で6割以上のシェアを握る巨大プラットフォーマーとなったPayPayに対し、公正取引委員会は「優越的地位の濫用」や「抱き合わせ販売」に抵触する恐れがないか強い関心を寄せていました。
自社の金融サービスである「PayPayカード」以外の競合他社決済手段を一律に排除する行為は、プラットフォームの市場支配力を利用した競争排除措置と見なされるリスクが極めて高かったのです。公取委からの非公式な警告と、発表直後に巻き起こったSNS上での激しい解約運動、そして他社決済サービス(楽天ペイやd払い)へのユーザー流出の兆候を前に、経営陣は完全排除という強硬策を事実上棚上げせざるを得ませんでした。
結果としてPayPay側が採った戦略は、「形式的な接続拒絶」を回避しつつ、「実質的な利便性とインセンティブの剥奪」によって自社カードへ誘導するという巧妙な軟着陸でした。規約上の完全締め出し期日は明言されないまま曖昧化され、現在に至るまで使える状態が温存されているのが真相です。