急な階段を450本余り下りきった先には、カマボコ型に掘り進められた無機質な空間が広がる。通路は大人一人がすれ違うのがやっとの狭さだ。当時はこの暗闇の中に、約4000人もの将兵がすし詰め状態で蠢いていたという。呼吸すら容易ではない酸欠空間、兵士たちの汗と血の匂い、そして終わりのない艦砲射撃の重低音。想像を絶する環境がここにあった。
司令官室の壁面を注視すると、黒々とした焦げ跡と、幾重にも刻まれた小さく鋭い窪みが目に入る。幕僚たちが手榴弾を破裂させて自決した際の痕跡だ。壁に走る亀裂は、単なる物理的な傷ではない。極限状態に置かれた人間が、自らの命を絶つ直前に感じていたであろう絶望と葛藤の生々しい証言に他ならない。照明が照らし出すその凹凸を眺めていると、時空が歪み、81年前の悲鳴が聞こえてくるかのような錯覚に捕らわれる。