歴史上で最も痛ましい執行例として記録されているのが、明末の悲劇的な名将・袁崇煥の事件だ。後金(後の清)の侵攻を幾度も阻み、国家の防波堤として戦い抜いた忠臣でありながら、敵の策謀による疑心暗鬼に陥った崇禎帝によって反逆の濡れ衣を着せられた。
彼に言い渡された判決こそが、凌遅刑であった。北京の市街地で執行された際、皇帝の宣伝工作を真に受けた群衆は彼を売国奴と信じ込み、削ぎ落とされた肉片を買い取って食べたという凄惨な記録すら残されている。国家への忠誠が裏切りとすり替えられ、熱狂した狂気の中で命を奪われた事件は、刑罰が民衆の欲望と結合したときに見せる最悪の形を示している。