浅草の裏社会といえば、文化的な文脈で語られることも少なくない。この街で芸人としてのキャリアをスタートさせた映画監督の北野武は、代表作『アウトレイジ』シリーズにおいて、虚飾のないバイオレンスと組織の冷酷な内部抗争を克明に描いて見せた。映画の中で表現された闇の力学は、かつての浅草周辺に実在した緊張感を彷彿とさせるものがあった。
だが、スクリーンの中のドラマと現代の現実は大きく乖離している。今日、Netflixなどの動画配信サービスで描かれる世界的なアンダーグラウンドの虚像とは裏腹に、リアルの暴力団事務所は寂れ、構成員の高齢化と困窮が顕著だ。
かつては映画のように街を闊歩し、恐れられた組織の男たち。今では警察の厳しい監視と厳しい社会の目に晒され、事務所の看板すら掲げられないのが実情である。北野武が映画で描いた時代は完全に過去のものとなり、浅草は「アウトレイジの世界」からの脱却を果たしたと言える。