本作の完成度を語る上で欠かせないのが、作詞を手掛けた荒木とよひさと、編曲を担当した井上鑑の存在です。のちに数多の名曲を世に送り出す荒木とよひさは、泰葉のハスキーかつ伸びやかな歌声を最大限に活かすため、母音の響きとリズムのアタック感を緻密に計算した言葉選びを徹底しました。
そして、寺尾聰の歴史的名盤『Reflections』などで日本の音楽シーンを席巻していたアレンジャー・井上鑑の手腕が炸裂します。イントロの突き抜けるようなブラスセクション、うねるようなスラップベース、そしてオリエンタルな旋律とフュージョン・ファンクを融合させたプログレッシブなアレンジは、まさに当時の最先端を行くサウンドデザインでした。
1981年11月に発売された1stアルバム『TRANSIT』には、この『フライディ・チャイナタウン』を筆頭に、ハイレベルなアーバン・グルーヴが惜しみなく詰め込まれており、現在では和モノ・シティポップ屈指の名盤として世界中のレコードコレクターから熱烈な争奪戦が繰り広げられています。