生物学的に見て、50代女性の卵巣内に残存する原始卵胞はほぼ枯渇状態にあります。しかし、完全な機能停止に至る直前の「閉経移行期(ペリメノポーズ)」において、脳下垂体から卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が異常に大量分泌されます。このホルモンの急上昇によって、眠っていた少数の卵胞が突発的に発育し、「ラストスパート排卵」と呼ばれる想定外の排卵が起きることがあるのです。
しかし、奇跡的に受精を果たしたとしても、乗り越えなければならない生物学的ハードルは過酷です。母体の加齢に伴い、卵子の細胞質や紡錘体には重度の機能低下が生じています。これにより、受精卵の染色体不分離が高頻度で発生し、ダウン症候群(21トリソミー)をはじめとする染色体異常の確率は、40代後半から50代にかけて指数関数的に跳ね上がります。
さらに、受精卵自体の異常が原因で、臨床的に確認された妊娠の約70%以上が初期流産に終わるという現実もあります。もし妊娠継続を視野に入れるのであれば、妊娠10週以降に血液検査で胎児の染色体異常のリスクを調べる新型出生前診断(NIPT)や、確定診断のための羊水検査など、高度な出生前カウンセリングを避けて通ることはできません。胎児の重篤な疾患や流産の悲痛な経験に耐えうるメンタルと医学的サポートの確保が不可欠です。