維新の英傑たちが思い描いた日本の未来像は、決して一枚岩ではなかった。
江戸城無血開城を成し遂げた西郷隆盛と、その前年に近江屋で倒れた坂本龍馬。二人が残した思想の余波は、新政府の制度設計に色濃く反映されている。龍馬が提示した「船中八策」の精神を受け継ぎつつも、西郷は旧士族たちの不満を抑え込むための現実的な兵制改革を模索した。彼らが命を賭して目指した「万機公論に決す」る近代国家の構想が、どのような葛藤と修正を経て形作られたのか。残された手紙の行間からは、理想と現実の狭間で揺れる人間らしい苦悩が鮮明に立ち現れてくる。