第96回アカデミー賞で長編アニメーション賞に輝いた本作には、宮﨑駿というクリエイターの生々しい葛藤と遺言とも言えるメッセージが込められている。積み木を重ねて世界の均衡を保とうとする大叔父は、映画制作という神聖な狂気に取り憑かれた宮﨑自身の姿に他ならない。そして彼が後継者に問いかける「自分たちの世界を作れ」という言葉は、次の世代の表現者たちに対する痛烈なバトンタッチでもある。
崩壊する積み木の世界を拒否し、悪意や傷を抱えたまま現実へと戻る眞人の選択。ここには、美しく完璧な理想郷に逃避するのではなく、混沌とした現実世界を生き抜くことこそが誠実さであるという哲学が表れている。単なるノスタルジーを打ち砕き、歪んだ世界でどう立つかを観客自身に問い直す姿勢が、世界的な評価へと繋がった。