「熱湯に入れた瞬間に底が綺麗に抜け落ちた」「煮沸中に鍋底から不気味な破裂音が響いた」という失敗の背景には、ガラスという素材特有の物理的性質が関係しています。家庭で使われる一般的な透明ジャム瓶や保存容器の多くは、ホウケイ酸ガラスなどの「耐熱ガラス」ではなく、ごく普通の「ソーダ石灰ガラス」で製造されています。
家庭用品品質表示法やJIS規格(JIS S 2304等)の基準において、一般的なソーダ石灰ガラスの耐熱温度差はおよそ42℃〜60℃程度と定められています。耐熱温度差とは「高温から急冷」あるいは「低温から急熱」した際に耐えられる温度のギャップを指します。つまり、室温20℃の瓶をいきなり80℃〜100℃の熱湯に沈めると、内外の温度差が安全限界の60℃を大幅に超え、急激な熱膨張による引張応力に耐えきれず割れてしまうのです。
これが、ガラス瓶を必ず水の状態から茹でる理由に他なりません。水と一緒に徐々に水温を上げていくことで、瓶の内側と外側が均一に膨張し、熱衝撃による割れを物理的に防ぐことができます。また、火を止めた後も冷水に放り込むような急冷は厳禁であり、鍋の湯が少し落ち着くまで待つか、トングで引き上げて室温の風通しのよい場所でゆっくり放熱させる配慮が求められます。