船が石垣に近づくと、石材の表面に「◯」「✕」「卍」や様々な家紋のような幾何学模様が刻まれているのを目にすることができます。これが「刻印石(こくいんせき)」です。
石垣に刻印が施された最大の理由は、徳川幕府による大坂城再建工事(天下普請)にあります。幕府は全国の諸大名に対して石材の運搬と石垣構築を命じました。各大名は、自らが切り出し運搬してきた石材が他藩の石材と混ざったり盗まれたりすることを防ぐための「所有権の証明」として、また工事の担当箇所を明確にして忠誠度をアピールするために独自の刻印を刻み込んだのです。
過酷な天下普請に駆り出された大名たちの意地と緊張感が、数百年の時を超えて今なお石垣の表面に生々しく刻み込まれています。船頭のレーザーポインターによる解説とともに刻印を探す体験は、知的好奇心を刺激する極上の時間となります。