日本の二大獣害事件として比較されるのが、大正4年に起きた「三毛別羆事件」と本事件です。両者を対比することで、ヒグマの行動パターンの多様性が浮き彫りになります。
三毛別事件の加害クマ(通称・袈裟懸け)は、300kgを超える冬眠し損ねた巨大なオスであり、明確に人間を「捕食対象(獲物)」として民家を襲撃し続けました。一方で福岡大ワンゲル部の事件は、北海の大自然の奥深くで発生した、「所有権への執着と排除行動」に起因する事故でした。
巨躯による圧倒的な破壊力で開拓民を恐怖に陥れた三毛別に対し、日高山脈の事件は「小柄な若いクマであっても、ひとたびスイッチが入れば屈強な若者たちを死に至らしめる」という、ヒグマ本来が持つ執念深さと身体能力の恐ろしさを証明しています。