医学界での研究が進む以前から、トライポフォビアはインターネット空間において強烈なミームとして拡散されてきた。2000年代初頭の匿名掲示板や画像投稿サイトにおいて、人間の身体画像に蓮の実の果托(ハスの実)を合成した「蓮コラ」と呼ばれる悪質な画像が流行し、多くのネットユーザーに視覚的トラウマを植え付けた歴史がある。
SNSやオンラインコミュニティにおける集合体恐怖症のネットの反応を定点観測すると、「蓮コラを見るまで自覚がなかったが、一度目撃してから日常の小さな穴にまで過敏になった」という告白が後を絶たない。心理学の研究者らは、この現象を「認知の鋭敏化(Sensitization)」と説明する。一度ショッキングな文脈で集合体の不快感を刷り込まれると、脳の扁桃体が過剰に学習し、本来は無害であるはずのスポンジの気泡やタピオカの粒、集合住宅の窓枠に対しても危険シグナルを誤認発信してしまう構造だ。
当時ネット上で画像を直視したユーザーの手記や体験談には、「数日間、吐き気や悪寒で食事が喉を通らなかった」「皮膚が痒くなり、自分の身体を掻きむしってしまった」といった生々しい身体症状が記されている。悪意ある合成画像が視覚野に与えたダメージは、デジタル時代における「視覚刺激による情動伝播」の典型例として現在も心理学研究の検証対象となっている。