日本の英語学習者を長年悩ませてきたのが、「What's the matter?」と「What's wrong?」のニュアンスの違いです。どちらも日本語では「どうしたの?」と訳されるため同義語として扱われがちですが、ネイティブスピーカーの頭の中蓋を開けると、喚起される感情のグラデーションに差が存在します。
「What's wrong?」は「wrong(正しくない、狂っている)」という語が示す通り、「本来あるべき状態から逸脱していること」に対する直接的な反応です。感情の距離感が近く、カジュアルなトーンで瞬時に発せられる傾向があります。家庭内や友人同士で誰かが泣き出した瞬間など、即時的な共感を伴う場面では「What's wrong?」が圧倒的に好まれます。
対して「What's the matter?」は、一歩引いた視点から「何が原因でその事態が生じているのか」という客観的な事象を問うトーンを含みます。そのため、イギリス英語圏をはじめとするフォーマル寄りの環境や、職場でのプロフェッショナルな対話においても極めて自然に馴染みます。