時透無一郎が読者や視聴者を惹きつける最大の要因は、初期に見せた感情の起伏が薄い省エネな態度と、記憶を取り戻した後に見せる温かな素顔との劇的なコントラストにあります。柱合会議での「あの雲の形、何て言うんだっけ」という上の空な初登場や、小鉄に対する容赦のない正論による鬼滅の刃屈指の切れ味鋭い毒舌は、効率を最優先する冷徹な剣士としての印象を植え付けました。
しかし、その冷淡さは悪意によるものではなく、過酷なトラウマによって記憶を失い、自分という輪郭を保つための防衛機制でした。刀鍛冶の里における上弦の伍・玉壺との死闘を通じて本来の自分を取り戻した瞬間、頑なだった表情は一変します。ふと見せたあどけない笑顔や、周囲を思いやる柔らかな眼差しは、張り詰めた戦いの日々の中でひときわ眩しい輝きを放ち、多くの読者に「守りたいこの笑顔」と強烈に印象付けました。