房総半島は、太平洋からの台風が北上する際の「第一防波堤」だ。2019年の台風15号・19号が残した爪痕は、今なお地元住民の記憶に生々しい。当時は送電鉄塔の倒壊や長期停電、広域に及ぶ断水が社会問題となった。
あれから数年。2026年現在の現場は一変している。県内全域で電柱の強化補強や地下化推進が加速した。特に山間部を走る高圧送電線周辺では、樹木の事前伐採がデジタル管理のもとで徹底されている。暴風に対する構造物の耐久力は一昔前とは比べるべくもない。
だが、安心はできない。台風の勢力自体が年々増大しているからだ。海水温の上昇に伴い、強い勢力を保ったまま千葉県沖へ到達するケースが定着しつつある。ハード整備と気候変動のスピードくじ引きは、今も危うい均衡の上にある。