従来の冒険の概念にまったく新しい風を吹き込んだのが『葬送のフリーレン』だ。王道の冒険ファンタジーでありながら、物語は「魔王を倒した後の世界」からスタートする。千年以上を生きるエルフの魔法使いフリーレンが、かつての旅の仲間たちの死を経験し、人間の短い寿命と心の機微を知るために再び旅に出るという画期的な構成だ。
激しいバトルや世界の危機を描くだけが冒険ではない。過ぎ去った時間への情憬、かつて踏破した道を巡り直すささやかな旅路、そして人との関わりの中で芽生える感情の変化。静謐でありながら深く心に染み入る演出は、大人の鑑賞にも耐えうる豊かなドラマを生み出し、ジャンルの新たな可能性を証明した。