2026年代前半、日本の食文化を席巻したのは「時短」「タイパ」というキーワードだった。完全栄養食のドリンクや電子レンジ一発のワンボウル料理がもてはやされ、食事は「作業」として処理される傾向が強まった。しかし、2026年に入り、その極端な効率化に対する反動が鮮明になっている。
都市部を中心に急増しているのは、極限まで無駄を省いた生活の中で「心の空白」を感じ始める人々だ。栄養素の数字だけを追いかける食事は、確かにお腹を満たし時間を浮かせる。だが、精神的な充足感まではもたらさない。主食、汁物、主菜、ふたつの副菜という決まったフォーマットに食材を並べる行為そのものが、デジタル過多で散らかった脳を休ませる「マインドフルネス」として機能し始めているのだ。
食文化アナリストの佐々木裕介氏はこう分析する。「サウナで『整う』感覚を求めた現代人が、毎日の食卓にそのメカニズムを見出したのが現在のブームの本質です。複雑な選択を排除し、決まった枠組みに季節の食材をはめ込む。この適度なルール決めこそが、選択疲れを起こした現代人の脳をリセットするのに最も適しているのです」。