「染色体」「DNA」「遺伝子」。科学ニュースや日常会話で混同されがちなこの3つの言葉だが、その関係性を本に例えると一気に理解が深まる。
まず「DNA」は、情報を記録するための文字や紙、あるいはインクそのものを指す化学物質(脱オキシリボ核酸)だ。そして「遺伝子」は、その文字によって書かれた具体的な「文章」や「物語」であり、タンパク質を作るための意味ある情報単位を意味する。では染色体とは何か。それは、膨大な文字(DNA)と物語(遺伝子)がぎっしり詰まった「本棚」あるいは折りたたまれた「全集の本」そのものに相当する。
もしDNAをそのまま引き伸ばすと、ひとつの細胞あたり約2メートルもの長さになる。これを細胞核という直径わずか数微小メートルのカプセルに収めるため、生命はヒストンと呼ばれるタンパク質の糸巻きにDNAを巻きつけ、超高密度に凝縮させる技を編み出した。顕微鏡下で塩基性色素によく染まる性質から「染色体」と名付けられたこの構造こそ、生命が数十億年の進化のなかで研ぎ澄ませた極限のデータ圧縮システムなのだ。