三島を語る上で欠かせないのが、生涯にわたる深い交流を結んだ美輪明宏の存在だ。美輪が主演を務めた戯曲『黒蜥蜴』の舞台裏で繰り広げられた二人の会話には、美意識を極限まで高め合おうとする凄まじい緊張感と、互いに対する深い敬意が満ちていた。今回入手した証言によると、三島は夜な夜な美輪のもとを訪れ、自らの芸術観や人生の最期についての着想を密かに打ち明けていたという。
また、彼が自ら結成した民間の自衛組織「楯の会」についても、従来の政治的な見解とは異なる人間ドラマが存在する。若者たちと共に汗を流し、肉体を鍛え上げた背景には、単なる思想的シンボリズムを超えた「肉体と言語の統合」をめざす切実な実験があった。楯の会の元隊員が明かすエピソードからは、厳しい指導者であると同時に、若者たちの将来を心から案じていた優しい兄貴分としての意外な素顔が見えてくる。