日本の居酒屋文化を語る上で欠かせない存在が、吉田類氏と太田和彦氏という二大巨頭だ。酒場ファンからは長年、親しみを込めて「東の類、西の太田」と称されてきた。
酒場を愛し、庶民の日常に寄り添いながら盃を交わす吉田氏のスタイルは、観る者に圧倒的な親近感と多幸感を与える。一方で、グラフィックデザイナーとしての鋭い審美眼を持ち、店の空間構成や器の美しさまでを美学として紡ぎ出す太田氏のアプローチは、洗練された嗜みとしての酒場歩きを提案してきた。
対照的なふたりのアプローチだが、その根底に流れる日本酒文化への深い敬意と愛着は共通している。二人が長年にわたり発信し続けたことで、日本酒は単なるアルコール飲料から、職人技と風土が織りなす伝統工芸としての再評価を獲得するに至った。