十朱幸代という女優の名を語る上で決して欠かせないのが、日本の映画史に刻んだ偉大な足跡だ。山田洋次監督の名作シリーズ第16作『男はつらいよ 葛飾立志篇』では、愛らしくも芯のあるヒロインを熱演。渥美清演じる寅さんとの絶妙な掛け合いで日本中を魅了し、観客の心に強い記憶を残した。
一方で、彼女の演技の幅広さを証明したのが東映で製作された文芸大作や極道映画だった。映画『夜汽車』では激しい愛憎に身を投じるヒロインを情熱的に演じきり、数々の権威ある映画賞を受賞。さらに『極道の妻たち II』では、これまでの可憐なイメージを鮮やかに覆し、腹のくくった姐御役を圧倒的な凄みと気品をもって表現した。日本映画界の黄金期を牽引した彼女の存在感は、今なお色あせることがない。