平成の大相撲を象徴する黄金カードといえば、曙と貴乃花光司の一戦を外すことはできない。ふたりが土俵で繰り広げた通算50回に及ぶ対戦は、まさに火花を散らす名勝負の連続だった。対戦成績はほぼ互角。長い手足を活かして一気に押し込む曙に対し、驚異的な腰の重さと柔軟性で残す貴乃花。
舞台裏では、互いを強く意識しすぎるがゆえの緊張感が漂っていた。支度部屋では口をきくこともなく、視線すら交わさない。しかし、引退後に明かされた本音によれば、両者の間には言葉を超えた深い尊敬が存在していた。厳しい稽古で追いつめられた極限状態の中、「あいつが居るから自分は強くなれる」と互いに心の中で認め合っていたという。土俵上で命を削り合った宿敵であり、最高の理解者だった。